下降大動脈、胸腹部大動脈置換のための直線切開:新しくてシンプルな肋骨-十字開胸術   Straight incision for extended descending and thoracoabdominal aortic replacement: novel and simple exposure with rib-cross thoracotomy. Interact Cardiovasc Thorac Surg. 2016 Sep;23(3):367-70. Minatoya K et al.

 

 

 

○私的コメント

 

難易度の高い胸腹部大動脈置換術の術野の視野確保のための新しい切開方法の報告です。スパイラルな切開と比較してFlat chest(日本人に多いたる型でない扁平な胸郭)の患者に対して有用な方法だそうです。ネット上無料で原著にアクセスできます。

 

Figure13のように左脇からお臍の横に直線的に切開するようです。

 

通常の手術との違いは肋骨の痛み(クライオで制御)と、肋骨の安定性の制御(ピン+縫合で制御)の必要性です。傷の感染は認めなかったそうです。LDSの場合、術後の創部離開は高頻度であり、十分なケアが必要です。

 

 

 

○要旨

 

目的

 

胸壁を肩甲骨の先のほうから第六肋間までスパイラルに切開することが、胸腹部置換もしくは下降大動脈置換術の標準的な切開法である。しかしながら、弓部に続く中枢部の展開は必ずしも十分とはいえない。マルファン症候群の患者は扁平な胸の傾向があり、左開胸の弓部の手術は困難を伴うことが多い。

 

 

方法

 

20125月から、47人の患者(平均年齢51.2 ± 16.1、範囲は9-79, 33人が男性)に対して下降大動脈拡張もしくは胸腹部瘤に対して新しい切開法を行った。伝統的なスパイラル名切開の変わりに施行した直線切開は脇から臍部に向かって、4-6肋骨が横切断された。アダムキュービッツ動脈の側副血行路の元となりうる広背筋と胸背動脈は保護される。2回の緊急手術が行われた。24人(51%)の患者で弓部瘤の血管内治療後の修繕が行われた。結合組織病は16人(34%)でマルファン症候群が13人、ロイスディーツ症候群が3人であった。すべての手術が超低体温で施行された。

 

 

結果

 

7人に下降大動脈全置換が行われた。他の患者では型胸腹部瘤の置換術が行われた。3人の患者で部分的弓部置換術、5人の患者で全弓部置換術、3人の患者で腹部大動脈へのYグラフト術が連続して行われた。手術時間は567 ± 141分、人工心肺継続時間259 ± 60 分、3人(6.4%)の患者で.重症脳卒中、1名軽症脳卒中を認めた。生存者において脊椎合併症は認めなかった。病院死亡は4.3%(2/47)で、これらの2人は胸腹部置換術を施行して、重症脳卒中を起こした患者である。

 

 

結論

 

この新しい、直線切開による肋骨-十字開胸術を用いた展開法は長区域の胸腹部大動脈の展開を可能にし、上行大動脈から腹部大動脈までの延長した手術を可能にする。