○マルファン症候群の小児および若年成人におけるアテノロールとロサルタンの比較  Atenolol versus Losartan in Children and Young Adults with Marfans Syndrome. N Engl J Med. 2014 Nov 27;371(22):2061-71. Lacro RV1 et al.

 

 

 

私的コメント

 

この論文はロサルタンがアテノロールより優れていることを証明しようとして研究を組まれたと思います。しかしながら予想外の結果となりました。主要評価項目の大動脈基部 z スコアでは優位差はつきませんでしたが、弁輪部のzスコアではアテノロールが優位差をつけて優れていました。大動脈解離、大動脈基部置換、死亡がロサルタンでそれぞれ、2181例に対して、アテノロール群で0100例といずれのイベントもアテノロール群のほうが少なかったです(優位差なし)。ロサルタンの平均用量は85mgで、アテノロールの平均用量151mgでした。日本の11歳の小児にアテノロール151mg内服できるかどうか、そもそも日本の最大用量アテノロールは100mg(米国は200mg)ということを考えると、βブロッカー、ARB併用療法のほうが好ましいかもしれません。またsupplementary appendixのデータによると、過去βブロッカーの不使用例では主要評価項目において優位にβブロッカーが優れ、小児において(男性16歳未満、女性15歳未満)βブロッカーのほうがよい傾向(優位差なし)でした。それを考えると、診断がついた時点で、まずβブロッカーを導入したほうがいいかもしれません。ちなみに血圧、脈拍はアテノロール95±12/54±8mmHg64±12/分、ロサルタン96±13/56±8mmHg76±13/分でした。結合組織病の若年者に対して適切な内服治療を行うと、収縮血圧100未満となるのではないでしょうか。βブロッカーまたロサルタン以外のARBのデータや、ビソプロロール、カルベジロール等のβブロッカーのデータ等も今後検討されるとありがたいです。

 

 

 

○要旨のサマリー(この文献の要旨はNEJM日本語版を参考にしてください。)

 

対象:マルファン症候群の小児および若年成人

 

2007.1-20112月、21の施設から0.5-25歳(アテノロール群 11.5±6.5 歳,ロサルタン群 11.0±6.2 歳)の患者608

 

・主要評価項目:大動脈基部 z スコアの変化量

 

・アテノロールは0.5mg/kg/dayから開始し20%以上脈拍が減少するように最大4.0mg/kg/dayまで増量(最大投与量は250mg、平均151mg)

 

・ロサルタンについては0.4mg/kg/dayから開始し1.4mg/kg/day(最大投与量は100mg、平均85mg)

 

・結果 大動脈基部 z スコアのベースライン補正変化量に,アテノロール群とロサルタン群とのあいだで有意差は認められなかった(それぞれ -0.139±0.013 SD/年と -0.107±0.013 SD/年,P0.08).大動脈基部手術,大動脈解離,死亡,およびこれらの事象の複合の 3 年発生率に,群間で有意差は認められなかった.