○TGF-β 受容体の変異によって引き起こされる動脈瘤症候群

Aneurysm syndromes caused by mutations in the TGF-beta receptor. N Engl J Med. 2006 Aug 24;355(8):788-98. Loeys BLet al.

 

NEJMの日本語アブストラクトもネット上で入手可能です。そちらもご確認ください。

下に私的コメントと小生作成の要旨を記載します。

 

○私的コメント

この文献における型、型は本質的には同じものであり、現在の分類と異なります。型、型の予後の違いは表現型の強さの違いによると考えられます。血管型エーラス・ダンロス症候群は型コラーゲン(COL3A1)遺伝子の異常により発症します。結合組織の病気であり、LDSと症状が似ていますが、原因遺伝子は異なります。

LDSは現在OMIM分類によるとLDS1-5まで分類されており、1.TGRBR12.TGFBR23.SMAD34.TGFB2の異常、5.TGFB3の異常とそれぞれ定義されています。本報告において若年の死亡を多く認めることからわかるように、重症例の自然歴は極めて不良と考えられ、積極的な治療介入の必要性は疑う余地がありません。精査、内服と適切な時期(早期)のVSARが重要で、それに加えて弓部置換、胸腹部置換などの外科治療、病態に応じた内科的管理が必要です。また現在においては軽症例や長期生存例も存在することがわかっています。重症例においても適切な管理で予後改善します。

 

 ○要旨

背景

 ロイスディーツ症候群は、広範囲な全身症状とともなう、最近報告された常染色体優性遺伝の大動脈瘤を起こす症候群である。この疾患は動脈屈曲と動脈瘤,両眼隔離,口蓋垂裂または口蓋裂を3徴とし,TGFβ 受容体1,2(それぞれ TGFBR1 TGFBR2)をコードする遺伝子のヘテロ接合性変異に起因する.

 

方法

離間家族52組の臨床的特徴、分子生物学的特徴を調査した。発端者40人はロイスディーツ症候群に典型的な症状を認めた。この症候群と血管型エーラス・ダンロス 症候群の表現型に重複があることを考慮し,特徴的な型コラーゲン異常またはロイスディーツ症候群で頭蓋顔面に現れる特徴を伴わない血管型 エーラス・ダンロス症候群患者 40 例の追加コホートをスクリーニングした。

 

結果

典型的なロイスディーツ症候群(型)の発端者すべてと、血管型エーラス・ダンロス症候群(型)を示す発端者 12 人で、TGFBR1 または TGFBR2に変異が確認された。両方の型の自然経過は進行性の動脈瘤(死亡年齢平均26.0歳)と妊娠関連合併症の発生率が高いこと(女性12人中6人)を特徴とした。ロイスディーツ症候群型の患者は型の名の患者より心血管手術を早期に受け(平均年齢16.9歳対26.9歳)、若年で死亡した(平均年齢22.6歳対31.8歳)。このコホートでは血管手術が59例行われ、1例が術中死亡した。術中死亡率が低い点でロイスディーツ症候群は血管型 エーラス・ダンロス症候群と区別される.

 

結論

TGFBR1または2に変異があると、TGFBR1または2に変異があると、患者は進行性の広範囲の血管疾患に罹患しやすくなる。臨床の重症度から、転帰が予測される。血管型エーラス・ダンロス症候群のような症状を示す患者の遺伝子型の判定は、予防的血管手術の実施やその時期などの治療指針に使用できる可能性がある。