○(ガイドライン)ロイスディーツ症候群:治療と診断の入門書
Loeys-Dietz syndrome: a primer for diagnosis and management. Genet Med. 2014 Aug;16(8):576-87. 2014.11. Review. MacCarrick G et al.
○私的コメント
ガイドラインがのっています。
Free PMC Articleですのでぜひ原文をご一読ください。
Tableにまとめられているguldelineを中心に要約します。
○要旨
Table1 LDSの分類、異常遺伝子と報告されたほかの疾患
LDS1 TGFGR1 家族性胸部大動脈瘤・解離
LDS2 TGFGR2 家族性胸部大動脈瘤・解離、マルファン症候群2型
LDS3 SMAD3 動脈瘤−骨関節炎症候群
LDS4 TGFB2 頭部、大動脈瘤と動脈蛇行とやせた外観
(OMIMの分類を参照にしてください。論文にはありませんが、OMIMの分類にはLDS5 (TGFB3の異常)も記載されています。)
Table2 ロイスディーツ症候群のための心血管病の治療、手術のガイドライン
心エコーは年一回。重症の患者はもっと頻繁に。
ARB、βブロッカー、ACE-Iなどの降圧剤の内服
厳密な血圧コントロール
運動制限、コンタクトスポーツの禁止、競争の禁止、isometric運動の禁止(スクワット、腕立て、懸垂、ウェイトリフティング)、疲労する運動、胸や頭に打撃を加える可能性がある運動
心血管系に悪影響をおよぼす薬剤の禁止、刺激物を含む薬(鼻づまり薬(鼻充血抑制剤)など)、血管収縮剤(偏頭痛に対するトリプタンなど)
感染性心内膜炎に対する予防
心房細動やその他の不整脈に対する通常の治療
大動脈起始部の手術の閾値に近づいた時の血管外科医への紹介
心臓血管外科への考慮
PDA(動脈管開存)とASD(心房中隔欠損症)の通常の治療
弁輪サイズによる大動脈弁温存大動脈基部置換術(VSAR)
ARBの急な中止を避けることと、術後すみやかに開始すること
Table3 LDS1-3の外科閾値
大動脈基部(小児)
1. 弁輪が大人のサイズになる2.0-2.2cmまで手術を待つこと
2. 小児において進行が遅く、頭蓋顔面の形態異常がすくないばあい成人同様4cmを閾値とするのがいいかもしれない。
3. 急速に進行する場合(0.5cm/year),頭蓋顔面の形態異常が強い場合、大動脈病変の家族歴を有する場合、早めの外科介入がなされるべき。
大動脈基部(成人): 4cm以上、もしくは年に0.5cm以上
上行大動脈、大動脈弓(成人): 4cm以上、成長に応じて個々でもっと速く閾値を決定するべき
下行大動脈(成人): 4.5-5.0cm もしくは 1年で1cm以上の拡大
腹部大動脈瘤 : 4.0-4.5cm もしくは1年で1cm以上の急激な拡大
内臓の動脈(SMA,CEA,IMA): 個々に適応を決定する。急激な拡大もしくは予想される径2-3倍の拡大
脳血管系の動脈 : 個々に適応を決定
Table4 LDSの血管ケアと外科手術のガイドライン
診断時にベースラインの脳血管と骨盤内のMRIもしくは造影CTにて3D画像のコントロールを作成する。1年後に経過を見る。動脈瘤の拡大、位置、サイズを調査する。その後2年毎に経過をみるのを推奨する。CTによる放射線被曝に注意をはらう。顔面頭蓋の形態異常が強い場合は幼児期からの精査を、そうでない場合は2-3歳からの精査を推奨する。
動脈瘤を認めた場合、血管外科もしくは脳血管外科のスペシャリストに検査のため、もしくは外科治療の計画のために相談する。
B型解離は積極的にf/uする。標準的に7-14日それから1,3,6,12ヶ月
異常身体所見がある場合は、動脈エコーにて動脈瘤、解離をスクリーニングすることを考慮する。
血管外科を考慮すべき時
動脈の蛇行、奇形、多数の動脈がある場合、外科治療の必要性を意味することがある。
硬膜拡張があったとしても、腰椎の脳髄液ドレナージはLDSの禁忌ではないが、ドレーン抜去後の髄液漏出に対して硬膜外血液パッチが必要となるかもしれない。
弓部と胸腹部の大動脈の外科治療においてパッチテクニック(島状にまとめてつなげる)のは避けるべきで、個々の動脈(大きな血管、腹部動脈、腎動脈)をそれぞれブランチのグラフトとつなぐべきである。
血管内治療は救命的に行なわれるべき、あとで直視下手術を行うことの出来る施設でするべきである。ステントグラフトの中枢と末梢のランディングゾーンはダクロングラフトのあるところにおくべきである。
腹部と脳血管の動脈瘤についてはそれぞれ適応を検討するべきである。
手術について
頸部椎骨動脈が高度に蛇行しているので、経験ある麻酔チームによるエコーガイド下のCV確保。
医原性の解離を避けるために、クランプや血管内カテーテル操作の際の厳密な循環制御。
ICUやそれに順ずる病室での頻繁な術後モニタリング。
Table5 整形外科領域のガイドライン
Table 6 アレルギーに対するガイドライン
食事暴露に対して反応した際のアレルゲンテスト
食事アレルゲンに対しての回避と一般的な治療
フードアレルゲンに暴露した際のエピペンの使用
環境アレルゲンの回避
皮膚炎にたいして積極的な保湿、それにくわえ、もしくは軟膏治療と局所クリーム
喘息の治療は気管支拡張剤のコンサーバティブな使用を考慮すべき(重症の場合は吸入ステロイドの慢性の使用等を考える)
喘息を減らすための耳や副鼻腔の感染に対する積極的な治療
喘息がある場合、降圧剤について論議すべき、ベータブロッカーは喘息を悪化させる可能性がある。
鼻充血除去剤は血圧を上げる、それゆえ慢性の鼻炎に対しては抗ヒスタミン剤か経鼻吸入ステロイド薬を使う
Individualizd Educaton Programとpatient’s emergency letterにエピペンの使用を申し込むこと。
Table 7 消化管疾患と栄養に対するガイドライン
体重、身長、BMIのモニタリング。患者の成長が不十分ならカロリーのサプリメントの閾値を低くする。あらゆる手術の前にBMIを最適化し保つ。
小児において成長が著しく不良な場合、カロリー補助のため経鼻胃管、もしくは胃婁からの栄養を考慮する。栄養剤については食物アレルギーの可能性を考慮する。
カルシウム摂取とビタミンDの定期的(診察ごと)モニタリング。欠如時は通常治療。
便秘に対してグリコラックス(PEG-3350)の使用を考慮する。便秘が長く続くとき、もしくは直腸陥入があるときは大腸を空にする維持療法を進めるべき。臨床的にEGBD(抗酸球性消化器疾患)やIBD(炎症性消化器疾患)が疑われたき場合内視鏡検査と生検を考慮すべき。内視鏡検査前に頚椎の安定性を評価すべき。内視鏡検査時の血圧と気道と、頚骨の管理のために麻酔の専門家の補助を考慮すべき。
EGIDとIBDに対して一般的な検査と治療。
Table 8 その他の推奨
頭蓋骨の左右不対象がある頭蓋早期癒合症に対して3DCTを施行し、頭蓋顔面の専門家へ紹介すること。一般のプロトコールにて治療。
口蓋裂に対する通常の治療。小児期の外科治療に対して頚椎の画像評価と治療を考慮。
頭痛の治療は複雑で難しい。頭痛の専門家への相談を考慮。血管収縮剤は禁忌である。
一般的なプロトコールによるヘルニアの治療。メッシュ挿入を考慮すべき、また繰り返すインターベンション治療による瘢痕ができることを考慮すべき。
ベースラインとして眼科的な評価。適応があれば近視や眼血管病に対する治療。網膜剥離のリスクがある。目に対する自然歴ははっきりしていない。それゆえ3年ごとに診察すべき。
臨床症状がある際の睡眠時無呼吸に対する精査と呼吸器科への相談
肋骨の修正は典型的にはコスメティックなものである。治療はタイミングを考えて一般手外科医と相談すべき。大動脈基部置換との同時手術は避けるべき。
遺伝子の専門家に全体的な治療計画、遺伝、再発リスク、家族の精査、妊娠テストのoptionについて相談すべき。
診断の際の精神社会的意味での家族に対する精神的な治療。
妊娠